熱に強く、強度が高いエンジニアリングプラスチック。自動車や電子機器の部品に使用されることが多く、わたしたちの生活に身近な存在です。
この記事では、エンジニアリングプラスチックの主な種類や用途、その特徴をご紹介します。
エンジニアリングプラスチックとは、耐熱性に優れ、強度がある高性能なプラスチックのことです。
特に、耐熱温度100℃以上のものを「汎用エンジニアリングプラスチック」、150℃以上のものを「スーパーエンジニアリングプラスチック」と呼びます。
また、非結晶性樹脂と、結晶性樹脂の2種類に分類されることもあります。
エンジニアリングプラスチックは、もともと工業用に開発されたものであり、自動車や電子機器の部品に多く使われますが、日用品にも使用されるなど、幅広い用途を持っています。
エンジニアリングプラスチックには、さまざまな種類のものがありますが、汎用エンジニアリングプラスチックの約9割を占めるのが「5大エンジニアリングプラスチック」です。
ここでは、5大エンプラの特徴を見ていきます。
ポリアセタール(POM)は、乳白色のなめらかな素材です。耐摩耗性・耐疲労性に優れているため、歯車などの部品によく使用されます。
ポリアミド(PA)は、耐衝撃性、耐溶剤性、耐薬品性、耐摩耗性に優れた素材です。ただし、吸湿性、吸水性が高いため、多湿の環境下では寸法に狂いが生じます。
屋内で使用する機械部品、衣類などに使用されます。
ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、耐衝撃性、耐溶剤性、電気絶縁性に優れたなめらかな素材です。他の素材と組み合わせて使用されるケースも多くあります。
モーター部品や電子部品などに、幅広く使用されています。
ポリカーボネート(PC)は、エンジニアリングプラスチックの中で唯一、透明の素材です。その透明性を生かし、家電製品、光化学部品、スマートフォンのカバーなどに使用されています。
寸法安定性、耐衝撃性には優れていますが、耐薬品性は低い素材です。
変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)は、耐熱性、耐無機薬品性、耐加水分解性、電気特性に優れ、汎用エンプラの中では、最も軽い素材です。電気機器、自動車の部品などに使用されます。
エンジニアリングプラスチックには、いくつかのメリットがありますが、特に大きなメリットとして、環境に優しい素材であること、用途が幅広いことが挙げられます。
この2つのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
エンジニアリングプラスチックは、汎用プラスチックよりも少ない使用量で、同じ性能のものが作れるため、エコな素材です。また、燃やしたときに、汎用プラスチックよりも、地球温暖化につながる二酸化炭素などの排出が少ないというメリットがあります。
さらに、原料は化石資源ではなく、植物資源から簡単に作れるものもあります。
世界中で「持続可能な開発目標」の達成が求められる中、環境に優しい素材は、ますます注目される可能性を秘めています。
エンジニアリングプラスチックは金属よりも軽く安価で、同じものを大量生産しやすいため、さまざまなものに活用が可能です。
具体的には、自動車部品や機械部品、電子機器部品のほか、スマートフォンのケース、液体の容器、食品の包装など、わたしたちの身近で、多くのものに用いられています。
エンジニアリングプラスチックのメリットをご紹介しましたが、デメリットも存在します。
デメリットを把握したうえで適切に使用し、エンプラを有効活用しましょう。
エンジニアリングプラスチックは、金属と比べた場合は安価ですが、汎用のプラスチックや鉄と比べた場合、価格が高いという特徴があります。
エンジニアリングプラスチックは、金属に比べると、強度や耐熱性が低いというデメリットがあります。
軽さや扱いやすさを重視するならば、エンジニアリングプラスチック、強度や耐熱性を重視するならば金属を使用するなど、重要視する点をよく検討し、使用する素材を選択する必要があります。
エンジニアリングプラスチックは、接着が難しい素材であり、接着の方法に課題が残っています。
メーカーによっては、難接着素材専用の接着剤を販売しているところがあるため、専用接着剤を使用することにより、課題を解決できます。
エンジニアリングプラスチックは、金属よりも加工がしやすく、軽いというメリットがあります。しかし、紫外線や水に弱く、金属に比べて、強度や耐熱性が低いというデメリットもあります。
使用する目的や環境によって、最適なものを選択し、メリットを生かして有効に活用しましょう。
また、各メーカーによってエンジニアリングプラスチックの特性は異なるため、カタログなどで確認してみましょう。