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ジェットディスペンサーの特徴と接触式との使い分け
本記事では、ジェットディスペンサーの仕組みや接触式との違い、適した用途について解説します。
ジェットディスペンサーとは
ジェットディスペンサーは、液剤を高速で射出し、ワーク表面に飛ばして塗布する非接触式のディスペンサーです。一般的な接触式ディスペンサーがノズル先端をワークに近づけて液剤を転写するのに対し、ジェット方式ではノズルとワークの間に一定の距離を保ったまま塗布を行います。
液剤の射出には、ピエゾ素子(圧電素子)やエアパルスなどの駆動機構が用いられます。ピエゾ素子を使用するタイプでは、電圧印加による素子の変形で液剤を瞬間的に押し出し、液滴として飛翔させます。この動作を高速で繰り返すことで、連続的なドット塗布やライン塗布が可能になります。
ジェットディスペンサーの大きな特徴は、タクトタイムの短縮です。ノズルの上下動作が不要なため、塗布ポイント間の移動時間を削減できます。また、ワークとの接触がないことから、柔らかい部品や傷つきやすい基板への塗布にも適しています。
接触式との違い
接触式ディスペンサーとジェットディスペンサーには、塗布方式の違いから生じるさまざまな特性の差があります。それぞれの特徴を理解することで、用途に応じた適切な選定が可能になります。
塗布動作の違い
接触式ディスペンサーは、ノズル先端をワーク表面に接近または接触させた状態で液剤を吐出します。液剤はノズルからワークへ直接転写されるため、塗布位置の精度はノズルの位置決め精度に依存します。塗布後はノズルを上昇させてから次の塗布位置へ移動するため、Z軸方向の動作が必要です。
一方、ジェットディスペンサーはノズルとワークの間に距離を保ったまま液剤を射出します。液滴が飛翔してワーク表面に着弾するため、ノズルのZ軸動作を省略できます。これにより、塗布ポイント間の移動がXY方向のみとなり、動作時間を短縮できます。
塗布速度の違い
タクトタイムの観点では、ジェットディスペンサーが有利です。接触式では1点あたりの塗布動作にノズルの下降・吐出・上昇という一連の工程が必要ですが、ジェット方式ではXY移動しながら連続的に射出できます。多点塗布が必要な基板実装などでは、生産性に大きな差が生じることがあります。
塗布形状の違い
接触式ディスペンサーは、ノズル径や吐出量の制御によってドット、ライン、面塗布など多様なパターンに対応します。特にビード塗布(線状塗布)やポッティング(充填塗布)では、連続的に一定量を吐出する接触式が適しています。
ジェットディスペンサーは、微小なドット塗布を得意とします。高速で液滴を射出できるため、微小ドットを高密度に配置する用途に向いています。ただし、大量の液剤を連続的に供給するような用途では、接触式の方が効率的な場合があります。
対応できるワーク形状
ジェットディスペンサーは、段差のあるワークや凹凸のある表面への塗布に強みを持ちます。非接触であるため、ノズルがワークの突起部分に干渉するリスクがありません。また、深い溝の底面や、狭いスペースへの塗布も可能です。
接触式ディスペンサーでは、ワーク形状に合わせてノズルの高さを調整する必要があります。複雑な形状のワークでは、ノズルの経路設計が複雑になることがあります。
ジェット方式の種類
ジェットディスペンサーには、液剤を射出する駆動機構の違いによっていくつかの種類があります。それぞれの方式には特徴があり、対応できる液剤の粘度や塗布精度に差があります。
ピエゾジェット方式
ピエゾ素子(圧電素子)の変形を利用して液剤を射出する方式です。電圧を印加するとピエゾ素子が瞬間的に変形し、その動きで液室内の液剤を押し出します。電圧の印加パターンを制御することで、液滴のサイズや射出速度を調整できます。
ピエゾジェット方式は、高い応答性と再現性が特徴です。微小な液滴を高精度に射出できるため、精密な塗布が求められる電子部品の実装工程などで広く使用されています。また、駆動にエアを使用しないため、クリーン環境での使用にも適しています。
ニードルジェット方式
ノズル内部のニードル(針状の弁体)を高速で往復動作させ、液剤を押し出す方式です。ニードルが液室を塞ぐ位置から急速に後退することで液剤が引き込まれ、その後ニードルが前進してノズル先端から液剤を射出します。
ニードルジェット方式は、比較的高粘度の液剤にも対応できる点が特徴です。ニードルの機械的な動作で液剤を押し出すため、粘度の高い接着剤やシリコーン樹脂なども射出可能です。ただし、ピエゾ方式と比較すると、射出できる液滴の最小サイズには制限があります。
エアパルスジェット方式
圧縮エアのパルスで液剤を射出する方式です。シリンジ(液剤容器)に瞬間的にエア圧をかけることで、ノズル先端から液剤を飛ばします。構造がシンプルで、導入コストを抑えやすい方式です。
エアパルス方式は、比較的大きな液滴の射出に向いています。微小液滴の精密制御ではピエゾ方式に劣りますが、装置構成がシンプルなため、メンテナンスが容易という利点があります。
適した用途と液剤
ジェットディスペンサーは、その特性を活かせる用途で高い効果を発揮します。一方で、すべての塗布工程に適しているわけではないため、用途と液剤の特性を踏まえた選定が重要です。
適した用途
多点塗布が必要な工程は、ジェットディスペンサーが得意とする領域です。プリント基板への接着剤塗布では、数十から数百の塗布ポイントを短時間で処理する必要があります。非接触で高速に塗布できるジェット方式は、このような工程でタクトタイムの短縮に貢献します。
段差や凹凸のあるワークへの塗布も、ジェットディスペンサーの適用領域です。電子部品が実装された基板のアンダーフィル塗布では、部品の周囲に液剤を塗布する必要があります。部品との干渉を避けながら塗布できる非接触方式は、このような工程で有効です。
微小ドットの高密度配置が求められる用途にも適しています。半導体パッケージや精密電子機器では、微量の接着剤やコーティング剤を正確な位置に塗布することが求められます。ピエゾジェット方式のディスペンサーは、このような精密塗布に対応できます。
対応可能な液剤
ジェットディスペンサーで使用できる液剤は、方式によって異なります。ピエゾジェット方式では、低〜中粘度の液剤が主な対象となります。UV硬化型接着剤、はんだペースト、導電性接着剤などが代表的な適用液剤です。
ニードルジェット方式では、より高粘度の液剤にも対応可能です。シリコーン樹脂、エポキシ接着剤、グリスなど、従来のジェット方式では扱いにくかった液剤も射出できます。ただし、フィラー(充填材)を高濃度で含む液剤は、ノズル詰まりのリスクがあるため注意が必要です。
液剤の選定にあたっては、粘度だけでなく、チクソ性(せん断力による粘度変化の特性)やポットライフ(使用可能時間)も考慮する必要があります。ジェットディスペンサーでは液剤に瞬間的な力がかかるため、液剤の物性がそのまま塗布品質に影響します。
ジェット方式が適さない用途
大量の液剤を連続的に供給する用途には、接触式の方が適している場合があります。ポッティング(樹脂充填)やダム塗布(枠状の塗布)など、一定量の液剤を連続的に吐出する工程では、接触式ディスペンサーの方が効率的に作業できます。
また、極めて高粘度の液剤や、大粒径のフィラーを含む液剤は、ジェット方式での射出が困難な場合があります。このような液剤を扱う工程では、プランジャーポンプ式やスクリューポンプ式などの容積計量方式を検討します。
この記事のまとめ
- ジェットディスペンサーは液剤を非接触で射出する方式で、ノズルの上下動作が不要なため高速塗布が可能です。
- 接触式と比較して、段差のあるワークや複雑な形状への塗布に強みがあり、多点塗布工程でタクトタイム短縮に貢献します。
- ピエゾジェット、ニードルジェット、エアパルスジェットなど複数の方式があり、対応できる液剤の粘度や塗布精度が異なります。
- 微小ドットの精密塗布や、電子部品周囲への塗布など、ジェット方式の特性を活かせる用途で高い効果を発揮します。
- 大量充填や極めて高粘度の液剤には接触式が適している場合もあるため、用途と液剤の特性に応じた方式選定が重要です。
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