セラミック加工とは? 加工種類と各特徴についてご紹介します
セラミックスとは?
セラミックという原料を用いて作られた物をセラミックスと呼びます。しかし、近年ではこの定義が曖昧なため、セラミックとセラミックスを同一の意味合いで用いることも多くなっています。
一般的にイメージされる例としては陶磁器やガラス、タイルなどがありますが、プラスチック・ナイロン等の有機物を除いたセメントを含む非金属・無機材料全般を指して用いられることが多いため、私たちの身の回りには実に多くのセラミックスが存在しているのです。
ファインセラミックスとオールドセラミックス
セラミックスは大きく2つに分類されます。本記事で主に取り上げるのは、ファインセラミックスです。
|
オールドセラミックス- |
陶磁器やガラス、セメントなど、天然の原料を主として作られる古くからのセラミックス。 |
|---|---|
|
ファインセラミックス |
高純度に精製された人工の原料を用い、厳密に制御された製造工程を経て作られる高機能なセラミックス。 |
セラミックスの特徴
セラミックスは樹脂や金属よりも前から活用されている材料です。その長所としては「耐熱性・耐摩耗性・耐腐食性が優れている」という点が挙げられますが、一方で短所としては脆さが挙げられます。また、セラミックスは様々な元素の組み合わせが可能である材料のため、その種類は非常に豊富です。もともと持っている特性に加えて、製品の目的に応じて適した組み合わせの物が作られています。
セラミックスの種類
|
アルミナ(Al₂O₃) |
高硬度、耐摩耗性、電気絶縁性に優れる。比較的安価で、最も広く使われるセラミックスの一つ。 主な用途: 半導体製造装置の部品、絶縁部品、耐摩耗部品、切削工具など。 |
|---|---|
|
ジルコニア(ZrO₂) |
セラミックスの中で最も高い強度と靭性(粘り強さ)を持つ。金属に近いしなやかさがあり、割れにくい。 主な用途: 包丁、ハサミ、歯科材料(インプラント)、ベアリングの玉など。 |
|
炭化ケイ素(SiC) |
ダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、耐熱性、耐摩耗性に非常に優れる。 主な用途: メカニカルシール、半導体製造装置の部材、高温環境で使われる部品など。 |
|
窒化ケイ素(Si₃N₄) |
高温での強度が高く、熱衝撃(急な温度変化)に強い。 主な用途: 自動車のエンジン部品、ベアリング、溶接機ノズルなど。 |
|
マシナブルセラミックス |
一般的な工作機械で切削加工ができるように作られたセラミックス。金属のように削れるため、複雑な形状の試作品や小ロット生産に適している。 主な用途: 試作品、治具、電気・電子部品、断熱部品など。 |
セラミック加工の種類
セラミックスに用いられる加工方法をいくつかご紹介します。
切削
刃物の工具を用いて材料を切断します。工具には手動で刃を押し当てるタイプのものから、自動で切断を繰り返す切削機械のようなタイプなど、様々な種類があります。最も普及している比較的コストの掛からない加工方法ですが、複雑な形状を求められるケースには適していません。
|
メリット |
比較的安価。マシナブルセラミックスの加工に適している。 |
|---|---|
|
デメリット |
硬度の高いセラミックスには不向き。チッピング(欠け)が発生しやすい。 |
研削
研削は研削砥石を高速で回転させることによって被加工物を削る加工方法です。切削加工では削ることが難しい硬度の素材も加工することができます。また、細かい寸法精度での形状を作り出せるメリットがある一方で、研削ポイントが熱を持ち温度が高くなることで、焼け割れが起こるデメリットもあります。
|
メリット |
高い寸法精度を実現できる。高硬度な材料の加工が可能。 |
|---|---|
|
デメリット |
加工に時間がかかる。加工時の熱による「研削割れ」のリスク管理が必要。 |
研磨
研磨は砥粒(とりゅう)を用いて被加工物の表面を少しずつ削り、滑らかな状態へしていく加工方法です。非常に細かい単位での調整が可能なため、微細な加工が求められるケースに重宝されています。また、凹凸の少ない仕上がりにできるため、美観が重視されている製品にも適しています。
|
メリット |
Ra(算術平均粗さ)で表される表面粗さを極めて小さくでき、鏡のような光沢(鏡面仕上げ)が可能。 |
|---|---|
|
デメリット |
形状を大きく変える加工には向かない。 |
放電加工
放電加工は放電現象を活用し、電極と被加工物の間に生じる熱によって表面を細かく除去する加工方法です。被加工物が電気を通す材料であれば硬さに関係なく加工できる特徴を持ちます。
|
メリット |
工具が直接触れないため、微細で複雑な形状の加工が可能。 |
|---|---|
|
デメリット |
加工速度が遅い。適用できる材料が限られる。 |
レーザー加工
レーザー加工はレーザー光線を活用して詳細な精密加工を行う加工方法です。レーザー加工は多岐にわたる加工方法に展開できるため、切断・穴あけ・溶接・表面処理・微細加工などの加工をトレースしながらもより精密な加工を実現することができます。
|
メリット |
非接触なため、加工物への負荷が少ない。非常に微細な穴あけや溝加工(スクライビング)が可能。 |
|---|---|
|
デメリット |
加工時に熱影響層(HAZ)が発生することがある。厚物の加工には限界がある。 |
セラミック加工が難しい理由
セラミックスには各特性を持った様々な種類の素材があるため、加工する際の条件設定が非常に困難であることがネックなポイントとして挙げられます。
例えば、同じ材料であっても硬いものから柔らかいものまで多様なグラデーションが存在するため、都度適切な調整が求められます。工具に関しても材料との適切な組み合わせを考える必要があるため、加工に関する知識と経験が求められます。また、セラミックスは曲がらない特性を持っているため、加工に掛かる工数が金属よりも多く、水や気温等の環境面も管理をする必要があります。
セラミック加工メーカーの選定ポイント
セラミックスには様々な種類と加工方法があります。そのため、材料の特性や保有している設備等によって、各メーカーが対応できるセラミック加工には違いがあります。メーカーのホームページを覗いてみることも一つの方法ですが、ホームページに掲載をされていない特殊な加工にも対応している企業は数多くあります。まずは加工を施したい材料とその製品イメージを固めた後、セラミック加工を請け負うメーカーに問い合わせてみるのも良いかもしれません。
|
加工実績と得意分野の確認 |
依頼したいセラミックス材料の加工実績が豊富かを確認します。 |
|---|---|
|
対応可能な加工設備と精度 |
求める寸法精度や表面粗さを実現できる加工設備(研削盤、マシニングセンタ、測定器など)を保有しているかを確認します。 |
|
試作から量産までの対応力 |
1個の試作品から対応してくれるのか、あるいは量産体制が整っているのか、自社のニーズに合っているかを確認しましょう。 |
セラミック加工 関連製品・サービスのご紹介
ナラサキ産業の高機能材料加工

ナラサキ産業では、セラミックス、エンジニアリングプラスチック、金属、ガラス、カーボンの5つのカテゴリーに加え、コーティングや精密洗浄などの表面処理を加えた計6カテゴリーの高機能材料加工を承ります。100社以上の協力工場ネットワークと独自のノウハウを駆使し、お客様のニーズに最適な加工方法をご提案します。
まとめ
本記事では、セラミック加工について、以下のポイントを中心に解説しました。
- セラミックスは、高硬度で耐熱性・耐摩耗性に優れる一方、硬くてもろい(脆性)ため、加工が非常に難しい素材であること。
- 加工方法には研削、研磨、レーザー加工など多様な種類があり、材料の特性や求める形状・精度に応じて、最適な手法を選択する必要があること。
- 難易度の高い加工であるため、依頼する業者の加工実績や保有設備、品質管理体制などを確認することが、製品の品質を左右する重要なポイントであること。
セラミック加工は、半導体や自動車、医療といった最先端産業を支える不可欠な技術です。この記事が、セラミック加工への理解を深め、貴社の製品開発や課題解決に向けた一助となれば幸いです。
セラミック加工の
関連プレゼンテーション
関連記事
NC旋盤とは? 加工の特徴や種類、対象素材について解説します
産業の世界において、精密かつ高速な製造技術は不可欠です。今回の記事では、その中心にあるNC旋盤(Numerical Control Lathe)に焦点を当てます。 NC旋盤の特徴、種類、加工可能な素材、そしてその技術的進歩と歴史を詳しく掘り下げていますので、NC旋盤の導入を検討中の企業様はぜひ参考にしてみてください。 このような方におすすめです ・NC旋盤加工の特徴について知りたい方 ・NC旋盤の構成要素や種類について知りたい方 ・NC旋盤を活用した素材加工を検討中の方
2025年09月10日
基板加工機とは?仕組みから種類のメリット&デメリット・価格相場・選び方も
電子部品を載せるプリント基板作成において、基盤加工機の選び方に迷うことがあるのではないでしょうか。 この記事では、切削タイプ・レーザータイプなどの違いから価格についてまでを解説し、用途にあった基盤加工機の選び方についてご紹介します。
2025年09月10日
ロストワックスとは? 鋳造の特徴や製品例について解説します
ロストワックス鋳造法は、その独特な製造プロセスを通じて、美術品から工業製品まで、多岐にわたる分野でその価値を発揮しています。この先進的な技術は、美しい表面仕上げと高い寸法精度を実現することで知られ、さらに多様な材質での鋳造が可能であり、複雑な形状の製品製作においても優れた能力を示します。 本記事では、ロストワックス鋳造の特徴とメリット、注意点、さらにはこの方法を用いて作られる製品の例と詳細な工程について解説します。
2025年09月05日
鋳鉄とは? 鋼・鉄との違いや種類別による特徴について解説します
鋳鉄は、自動車や家庭用品、マンホールなど、さまざまな用途で幅広く使用されている金属材料です。製造方法や処理によってさまざまな種類に分けられるため、材料の選定や加工にはそれぞれの特性を理解することが不可欠です。 この記事では、鋳鉄の特徴や各種類の特徴について解説します。関連するおすすめ製品も紹介していますので、鉄加工に関して課題を抱いている企業様はぜひ参考にしてみてください。 このような方におすすめです ・鋳鉄の特性や鋼 / 鋼 / 鉄との違いについて知りたい方 ・鋳鉄の種類とそれぞれの特性について知りたい方 ・鉄加工に関するおすすめの製品を探している方
2025年09月25日
プレス加工とは?種類やメリット、依頼先の選び方までわかりやすく解説
プレス加工は、自動車部品から家電製品、日用品に至るまで、私たちの身の回りにある多くの製品を形作るために不可欠な製造技術です。特に、同じ形状の部品を短時間で、かつ高いコスト効率で大量に生産できる点が大きな特徴です。 本記事は、製造業のご担当者様で、プレス加工に関する基本的な情報を収集されている方や、知識を深めたいと考えている方に向けた内容です。プレス加工の基礎から、その種類、メリット・デメリット、主な用途、そして信頼できる依頼先を選定する際のポイントについて詳しく解説します。
2025年10月16日
プラスチック成形とは?種類・仕組み・成型方法を解説
プラスチックは、人工的に作られた合成樹脂です。プラスチックを成型する方法は数多くあり、それぞれで用途や特徴が異なります。この記事では、プラスチック成形の種類と仕組み、成型方法についてご紹介します。
2025年09月29日
2色成形とは?メリットやインサート成形との違いを徹底解説
2色成形は、異なる2種類の樹脂を一体化させる高度な射出成形技術です。部品点数や組立工数を削減し、コストダウンと品質向上を両立できるため、自動車部品から家電、住宅設備まで幅広い分野で注目されています。 本記事では、製品開発や設計に携わるご担当者様に向けて、2色成形の基本原理からメリット、他の加工方法との違い、具体的な用途事例まで詳しく解説します。
2025年09月25日
特殊鋼とは? | 種類や加工方法・製品について解説
耐久性、耐熱性、耐摩耗性に優れた特性を有する「特殊鋼」という素材は、自動車部品、建産機、工作機械、工具類など幅広い分野でその性能を発揮しています。 この記事では、特殊鋼が有する特性や提供するメリット、種類、加工方法、さらには宮崎精鋼株式会社による特殊鋼製品について詳しくご紹介します。特殊鋼を活用した加工製品の採用を検討中の企業様は、ぜひ参考にしてみてください。
2025年09月19日
EMS(電子機器受託製造)とは?メリットやOEMとの違い、選び方まで解説
近年、電子機器の高度化・複雑化が進む中、製品開発や生産体制の効率化は多くの企業にとって重要な課題です。EMS(電子機器受託製造)は、こうした課題解決の一助となる選択肢として注目されています。本記事では、EMSの基本的な内容から、そのメリット、類似する生産形態との違い、そして信頼できるパートナー選びのポイントについて詳しく解説します。
2025年09月04日
精密板金加工とは?主な工程やメーカー選定のポイントを解説
電子機器や医療機器、半導体製造装置など、現代の高度な産業を支える製品には、極めて高い精度で製造された金属部品が不可欠です。精密板金加工は、そうした要求に応えるための重要な金属加工技術です。本記事は、企業の開発・設計担当者や製造・生産技術担当者の方々を対象に、精密板金加工の概要から一般的な板金加工との違い、具体的な加工工程、主な用途、そして信頼できるメーカーを選定するためのポイントまで、幅広くご紹介します。
2025年09月04日
超音波金属接合とは?原理・特徴・応用分野を徹底解説
超音波金属接合は、重ねた金属を超音波振動によって接合する技術で、適切に行うことで接合品質と効率を両立することができます。 「この技術について詳しく知りたいけれど、専門的で難しそう」だと感じている方に向けて、この記事では超音波金属接合の基本から特徴、応用分野まで徹底的に解説します。
2025年09月08日
ダイレクトブロー成形(押出ブロー成形)|特長・製造プロセス・製品例を解説
ダイレクトブロー成形(押出ブロー成形)は、シャンプーボトルや飲料容器など、私たちの身近にある様々なプラスチック製品の製造に欠かせない成形技術です。本記事では、この技術の基本的な仕組みから、特長・メリット、製造プロセス、さらには具体的な製品例まで、詳しく解説していきます。
2025年09月24日
超音波溶着|メリットや溶着機・装置について解説
超音波溶着は、超音波を利用して樹脂を溶着させる技術です。精電舎電子工業では、超音波溶着機の開発・設計・製造・販売や、工具ホーン・受治具の製作を行っています。70年以上のノウハウを生かし、お客様のニーズに合わせ柔軟に対応いたします。
2025年09月08日
インサート成形とは? メリット・デメリットや用途例を解説
インサート成形は、プラスチックと金属などの異なる素材を組み合わせる製造技術です。 今回は、インサート成形の基本的なプロセス、その主な利点と限界、さらには多様な応用分野について解説します。複雑な形状や高い機能性が求められる部品の製造において、どのようにインサート成形が重要な役割を果たしているのかを解説します。
2025年09月25日
ブロー成形とは? 特徴・メリットや活用した製品例について解説します
ブロー成形とは、多様なプラスチック製品を効率的に製造する技術です。この記事では、ブロー成形の基本的な原理から、その多様な種類、射出成形との違い、そして特徴やメリットに至るまでを詳しく解説します。 日常生活でよく目にするペットボトルや洗剤容器から、自動車部品に至るまで、ブロー成形技術がいかに広範囲にわたり利用されているかをご紹介します。
2025年09月24日
多層ブロー成形|付加価値の高いプラスチックボトルを製造
多層ブロー成形は、複数の異なる樹脂を積層して容器を成形する技術です。一種類の樹脂だけでは満たせない機能要件に対応できます。 ブロー成形機のリーディングカンパニーであるタハラは、単層ブロー成形機だけでなく、各種ニーズに対応できる用途別の多層ブロー成形機の製造も行っています。
2025年09月24日
研磨加工|仕上げ工程技術の特徴・種類・加工手順を解説
研磨加工は、製品の表面を滑らかにし、所定の形状や寸法を実現するための重要な技術です。金属加工から鏡や宝石まで、様々な素材に対して高精度な仕上げを可能にします。 研磨加工の基本的な概要、研削加工との違い、各種研磨方法の特徴やメリット、具体的な手順、そしてナノ単位の精密研磨を提供するNEOSの技術について詳しく解説します。
2025年09月02日
親水処理のメカニズム|表面改質による濡れ性・接着性の向上
親水処理とは、材料表面に水や液体がなじみやすくするための重要な技術です。この処理により、材料の接着性や密着性が向上し、さまざまな産業でその効果が活用されています。 本記事では、親水処理の基本から、具体的な用途や手法について詳しく解説します。
2025年09月02日
超撥水とは?加工により材料表面に超撥水機能を付与する技術
超撥水加工は、材料表面に極めて高い撥水性を付与する技術です。この処理により、水滴が表面で150°以上の接触角を形成し、ほぼ完全な球形を保ったまま転がり落ちる驚異的な効果が得られます。 本記事では、超撥水加工の原理、特徴、手法、そして応用分野について詳しく解説します。
2025年09月02日
冷間プレス(コールドプレス)とは?基礎知識から応用事例まで詳しく解説
製造業において、部品の精度やコスト効率は常に重要な課題です。その解決策の一つとして注目される成形技術が、冷間プレスです。材料に熱を加えずに常温で成形するため、材料ロスを最小限に抑えつつ、高精度かつ高品質な製品の製造を可能にします。 本記事では、冷間プレスがどのような技術なのか、その原理やメリット・デメリット、他の成形技術との違い、そして具体的な用途や事例について詳しく解説します。
2025年09月11日