EMC試験は、電子機器や電気機器の安全、信頼性に欠かせない重要な試験です。この記事では、EMC試験とは何かを具体的にご紹介し、試験の種類やなぜこの試験が必要なのかなどを解説します。
あわせて、EMC試験の将来的展望もいくつかお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
まずは、EMC試験とはどのようなものなのかをご紹介します。
「EMC」とは、電気・電子機器が発する電磁妨害波が、他の機器やシステムに影響を与えずに相互が正常に動作する耐性を言います。
EMC試験では、電気機器が発する電磁波を測定して、周囲の電気製品などに影響を与えないか、他の電気製品などからの影響を受けずに正常に動作するかを確認します。
EMC試験は以下の要因で重要視されています。
製品の信頼性と安全性を確保するためにはEMC試験は不可欠と言えます。
ここでは、EMC試験が必要な事例で、代表的なものをご紹介します。
製品が電磁環境下で正常に機能し、周囲の機器などに妨害を引き起こさないことを確認することが重要です。試験で製品が規制要件に適合して市場に出荷できるかを保証することができます。
患者や他の危機に対する電磁妨害のリスクを最小限に抑える必要がある医療機器は、EMC試験をパスすることが重要です。
自動車内の通信システムや電子機器は、さまざまな電磁環境下で安定した動作が求められます。
EMC試験には、「放射性試験」「導電性試験」「放射耐性試験」「導電耐性試験」があります。これらの試験は製品が市場に出る前に行われるものです。
国際的な規格や地域ごとの規制に準拠しているかを確認し、製品の信頼性と品質を向上させることを目的としています。
ここでは、それぞれの試験について解説しましょう。
電子機器が発する電磁波レベルを測定し、それが規定された範囲内に収まっているかを確認します。この試験は、周囲の電子機器や通信システムへの影響を防ぐために重要です。
電子機器が通信ケーブルや電源ラインを介して発生する電磁ノイズを測定して、それが許容範囲であるか確認する試験です。
電子機器が周囲からの電磁波に対してどれだけの耐性を持っているかを評価する試験です。
電子機器が通信ケーブルや電源ラインを介して外部から受けるノイズに対する耐性を評価する試験です。
さまざまな場面で行われているEMC試験。この試験が必要な理由は以下の通りです。
私たちの電磁環境は、電動化や自動運転技術の普及、IoTデバイスの普及に伴いますます複雑化しています。電磁ノイズ問題が顕著になっている現在、EMC試験は欠かせない試験です。
EMC試験は、電子機器が誤作動や障害を起こさないように確認する大事な試験です。
特にEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)、自動運転技術の進展において、安全性と信頼性を確保するために大事な要素となっています。
EMC規格は、国際的に定められたものと各国が定めたものがあります。製品の出荷や販売にはこれらの規格を満たすことが重要です。
EMC試験はビジネスの観点からも欠かせない要素です。電磁ノイズ対策を施す「EMC設計」も重要であると知られています。
EMC試験の流れをおおまかに説明します。
依頼された試験対象物の詳細、条件などをヒアリングします。試験の見積もりを確認し、試験実施に関する打ち合わせを行います。
実際にEMC試験を行います。
試験の結果内容を分析し、報告して試験が完了です。
EMC試験の将来的な展望は、以下のものが考えられます。
IoTデバイスの普及により、周囲の電子機器との相互運用性が重要となってきます。今後、EMC試験では、IoTデバイスがネットワークに接続された状態での規格やテスト手法が必要になります。
5G通信技術の普及によって、電磁波はより高速で高周波のものが使われるようになっています。これによって、電子機器が受ける電磁干渉レベルが増加してきているため、将来は5G周波数帯域での耐性試験や放射性試験が必要となることが予想されます。
電気自動車(EV)が普及されていくにつれ、自動車内での電子機器の密度が増加するため電磁干渉の問題が顕著化されてくるでしょう。EMC試験は将来的にEV内部での耐性試験や周辺環境との相互運用性の確保試験が重要になってくるはずです。
ワイヤレス給電技術の進化に伴い、EMC試験はワイヤレス給電による電磁干渉や耐性の評価が求められるようになるでしょう。
EMC試験は、電子機器が安全に使用できるか、さらに周辺の電子機器へ影響を与えないか、ということを確認するために必要な試験です。
今後は、さまざまな変化や技術の進化に合わせてEMC試験もより高度な技術が必要になってくるでしょう。また、新たなテクノロジーに対する評価基準の更新やテスト手法も重要となってくるのではないでしょうか。