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殺虫灯(殺虫器)とは? | 種類や工場・倉庫で活躍する製品の選び方を紹介

工場や倉庫、厨房といった業務用の施設において、異物混入や衛生環境の悪化につながる飛翔害虫の対策は、品質管理における重要な課題です。殺虫灯は、このような課題を解決するための有効な手段の一つとして広く導入されています。

本記事では、業務用殺虫灯の導入を検討されている工場や事業所の担当者様に向けて、殺虫灯の基本的な仕組みから、駆除方式や設置場所による種類の違い、自社の環境に合った製品を選ぶためのポイント、そして混同されやすい誘虫灯との違いまで、網羅的にご紹介します。

業務用殺虫灯とは

業務用殺虫灯とは、一般的に「電撃殺虫器」とも呼ばれ、光を利用してハエや蛾などの飛翔害虫を誘い寄せ、駆除・捕獲する電気設備です。食品工場や医薬品工場、精密機器工場、レストランの厨房など、特に高度な衛生管理が求められる環境で、製品への異物混入を防ぎ、クリーンな作業空間を維持することを主な目的として設置されます。

殺虫灯の基本的な仕組み

殺虫灯は、大きく分けて「誘引」と「駆除」の2つのステップで機能します。

まず、多くの夜行性昆虫が持つ「光に集まる習性(走光性)」を利用します。殺虫灯に内蔵された誘虫ランプ(捕虫用蛍光ランプ)は、虫が特に好むとされる波長365nm(ナノメートル)前後の近紫外線(UV-A)を効率的に放射します。この光に引き寄せられた虫を、次のステップで駆除・捕獲する仕組みです。

誘引された虫の駆除方法として最も一般的なのが、高電圧の流れる格子(電撃格子)に接触させて感電死させる「電撃式」です。製品によっては2,000Vから7,000Vもの高電圧を発生させ、虫を瞬時に駆除します。この他にも、後述する粘着シートで捕獲する方式や、ファンで吸引する方式などがあります。

殺虫灯を導入する主なメリット

業務用殺虫灯の導入には、主に4つのメリットがあります。

衛生環境の維持

最大のメリットは、飛翔害虫による製品への異物混入リスクを大幅に低減できる点です。特に食品や医薬品の製造現場では、一匹の虫の混入が大規模な製品回収や信用の失墜につながる可能性があります。殺虫灯は、こうした深刻な事態を防ぐための重要な設備投資と位置づけられます。

薬剤不使用による安全性

殺虫スプレーなどの薬剤を使用しないため、化学物質の飛散や残留の心配がありません。そのため、食品を直接取り扱う厨房や生産ラインの近くでも、安全に使用することが可能です。

24時間体制での自動的な害虫対策

一度設置すれば、人の手を介さずに24時間連続で稼働し、自動的に害虫対策を行います。特に虫の活動が活発になる夜間でも、人のいない工場内で静かに稼働し続け、翌日の作業環境をクリーンに保ちます。

ランニングコストの低さ

近年のモデルは省エネ設計が進んでおり、特にLED光源の製品は消費電力を低く抑えられます。例えば、ある製品では1時間あたりの電気代が約0.32円と、長時間の使用でも経済的な負担が少ないのが特徴です。

業務用殺虫灯の種類と特徴

業務用殺虫灯は、「駆除方式」「設置場所」「光源」によっていくつかの種類に分類されます。それぞれの特徴を理解し、自社の環境に最適なものを選ぶことが重要です。

駆除方式による違い

虫をどのように駆除・捕獲するかによって、主に「電撃式」「粘着式」「吸引式」の3つのタイプに分けられます。衛生管理のレベルや設置場所に応じて、適切な方式を選ぶ必要があります。

特徴

電撃式

粘着式

吸引式

駆除方法

高電圧で感電死させる

強力な粘着シートで捕獲する

ファンで吸引し捕獲する

衛生面

△(虫の死骸が飛散する可能性がある)

◎(死骸が飛散せず衛生的)

〇(死骸は内部に保持される)

静音性

△(「バチッ」という作動音がする)

◎(作動音なし)

△(ファンの作動音あり)

メンテナンス

〇(受け皿の定期的な清掃)

△(捕虫紙の定期的な交換が必要)

〇(捕獲容器の清掃)

主な用途

屋外、非衛生管理エリア(駐車場、倉庫の軒下など)

食品工場、厨房、クリーンルームなど

オフィス、店舗、静かな屋内など

HACCP対応

×(非推奨)

◎(推奨)

〇(使用可)

設置場所による違い(屋内用・屋外用)

殺虫灯は、設置される環境に合わせて設計が異なります。

屋内用

食品工場やレストラン、店舗内など、屋内での使用を想定したタイプです。安全性を高めるため、メンテナンス時に保護ガードや虫受け皿を外すと自動的に電源が切れる安全装置を備えたモデルが多くあります。

屋外用・軒下用

駐車場や公園、施設の出入り口付近の軒下など、屋外での使用に特化したタイプです。雨風にさらされることを想定し、衝撃やサビに強いステンレスなどの耐久性の高い素材で作られています。製品によっては、IPX4相当の防水性能を持つものもあります。

光源による違い(蛍光灯・LED)

誘虫ランプの光源には、従来の「蛍光灯」と新しい「LED」の2種類があります。これは初期投資と長期的な運用コストのバランスを考える上で重要なポイントです。

蛍光灯

従来から広く使われている光源です。本体価格は比較的安価ですが、LEDに比べて寿命が短く、消費電力も大きい傾向にあります。また、誘虫効果の要である紫外線の放射量は、点灯していても時間とともに劣化するため、最大の効果を維持するには半年から1年ごとの定期的な交換が推奨されます。

LED

近年主流となっている光源です。本体価格は蛍光灯タイプより高価ですが、寿命が約30,000〜40,000時間と蛍光灯の約6倍も長く、消費電力も約半分に抑えられます。これにより、ランプ交換の手間とコスト、日々の電気代といった運用コスト(ランニングコスト)を大幅に削減できるため、長期的に見れば経済的です。

業務用殺虫灯の選び方 5つのポイント

多種多様な殺虫灯の中から、自社に最適な一台を選ぶための5つのポイントを解説します。

設置環境(場所・広さ)で選ぶ

まず、殺虫灯をどこに設置するかを明確にしましょう。屋内の生産エリアであれば「屋内用」、荷物の搬入口の軒下であれば「屋外用」といったように、環境に適したモデルを選びます。

また、製品ごとに有効面積の目安が定められています。設置したい空間の広さに見合った能力を持つ製品を選ぶことが、効果を最大限に引き出す鍵となります。

衛生管理基準(HACCP対応)の要件で選ぶ

食品工場や厨房など、HACCP(ハサップ)のような厳格な衛生管理基準が求められる環境では、駆除方式の選択が極めて重要です。

電撃式の殺虫灯は、虫を駆除する際に死骸の破片が周囲に飛散する可能性があり、これが新たな異物混入の原因となり得ます。そのため、HACCPを導入している施設では電撃式の使用は推奨されません。

このような場所では、捕獲した虫が粘着シートに固定され飛散する心配のない「粘着式捕虫器」の導入が必須となります。これは単なる推奨事項ではなく、監査対応や取引先からの信頼維持にも関わる重要なコンプライアンス要件です。

安全性への配慮で選ぶ

従業員が安全に使用できるよう、安全装置の有無も確認しましょう。特に電撃式の場合、高電圧部分に誤って手が触れることのないよう、目の細かい保護ガードが付いていることが重要です。

さらに、清掃時に保護ガードや虫受け皿を取り外すと、自動で電源がオフになる「安全スイッチ」機能が搭載されているモデルは、メンテナンス時の感電事故を防ぐ上で非常に有効です。

ランニングコストで選ぶ

初期費用(イニシャルコスト)だけでなく、長期的な運用費用(ランニングコスト)を含めた総所有コスト(TCO)で判断することが賢明です。

前述の通り、LED光源のモデルは本体価格が高い傾向にありますが、電気代の安さとランプ交換頻度の低さから、数年単位で見ると蛍光灯モデルよりも総コストを抑えられるケースが多くあります。特に設置台数が多い工場では、メンテナンスにかかる人件費の削減効果も大きくなります。

特殊環境(防爆エリアなど)への対応で選ぶ

化学工場や塗装工場、ガソリンスタンドなど、引火性のガスや粉塵が存在し、爆発の危険性がある「防爆エリア」では、一般の電気機器は使用できません。

このような特殊な環境には、安全増防爆構造などの認証を取得した「防爆形」の捕虫器を選ぶ必要があります。これらのモデルは、火花の発生源となりうる電撃式ではなく、安全な粘着式が採用されています。

殺虫灯と誘虫灯の違い

害虫対策の器具を調べていると、「誘虫灯」という言葉も目にすることがあります。殺虫灯と誘虫灯は目的が全く異なるため、違いを正しく理解しておく必要があります。

目的と機能の根本的な違い

両者の最も大きな違いは、「殺虫機能の有無」です。

  • 殺虫灯(捕虫器):光で虫を「誘引」し、さらに「駆除・捕獲」することを目的としています。エリア内の害虫を積極的に減らすための「駆除・捕獲装置」です。

  • 誘虫灯:光で虫を「誘引」するだけの装置です。殺虫機能はなく、虫を特定の場所に集める「おとり(デコイ)」の役割を果たします。

メリットと適した用途

目的が違うため、適した用途も異なります。

殺虫灯(粘着式)が適した用途

工場内部や厨房など、屋内に侵入してしまった虫を確実に捕獲し、衛生環境を維持したい場合に適しています。また、捕獲した虫の種類や数を分析することで、どのような虫がいつ、どこから侵入しているかを把握する「モニタリング」にも活用でき、より効果的な防虫対策の立案に役立ちます。

誘虫灯が適した用途

施設の屋外での侵入防止対策に適しています。建物の出入口から離れた場所に設置することで、建物に近づく前の虫を誘虫灯におびき寄せ、屋内への侵入自体を減らす効果が期待できます。虫の死骸が発生しないため清掃が不要で、運転音もなく、生態系への影響も少ないというメリットがあります。

高度な衛生管理を行う上では、これらを単独で使うのではなく、屋外の敷地境界に「誘虫灯」を設置して侵入リスクを下げ、屋内に「殺虫灯(粘着式)」を設置して万が一侵入した虫を捕獲・モニタリングするという、多層的な防衛策(統合的有害生物管理:IPM)を構築することが理想的です。

屋外誘虫灯「オプトリウム」のご紹介

Optrium Mv (2)

オプトリウムでは、集めた虫を捕獲、殺虫しません。建物の開口部付近へ侵入しようと寄ってきた虫だけを引き離し、離れた場所に虫を誘引することで屋内への虫の侵入リスクを低減することができます。

また、薬剤を使用せず、環境や生態系に配慮した設計が施されているため、SDGsの観点からも優れた防虫対策です。

主な特長
照射角度や紫外線の強度も含めて制御可能
人体への安全性
薬剤を使用せず、光のコントロールで防虫対策を実現

オプトリウムは、低誘引灯や虫の好む光をカットしたウィンドウフィルム等の防虫製品と組み合わせることで、より効果的な防虫対策を実現する新しいソリューションとして注目されています。

オプトリウムについて詳しく見る

まとめ

本記事では、業務用殺虫灯について、以下のポイントを中心に解説しました。

  1. 業務用殺虫灯は、光で虫を誘い、高電圧や粘着シートで駆除・捕獲する装置であること。

  2. 駆除方式には「電撃式」「粘着式」「吸引式」があり、HACCP対応が求められる食品工場などでは、死骸が飛散しない「粘着式」が推奨されること。

  3. 「誘虫灯」は虫を殺さずにおびき寄せる装置であり、屋外での侵入防止対策として有効であること。

自社の設置環境や衛生管理基準を正しく理解し、目的に合った殺虫灯を選定・運用することが、安全でクリーンな職場環境の実現につながります。この記事が、皆様の製品選定の一助となれば幸いです。

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