プローブとは、オシロスコープなどの計測器に接続されて使用される計測器具です。さまざまな特性を持ったプローブが存在しており、用途に合わせて正確な計測を可能にします。
今回は、プローブの基礎知識から実践的な正しい使い方のコツまで詳しく紹介します。
「プローブ」とは、波形観測において、オシロスコープと測定対象物を接続し、電気信号をオシロスコープへ入力するための器具のことを言います。
エレクトロニクス分野では、電子回路の検針や、工業製品のメンテナンスなどで電圧や位相差などの電気信号を測定するために用いられています。
「プローブ(probe)」とは、探針などの意味を持つ英単語です。
プローブは主に、一般的に工学分野ではオシロスコープなどの測定器と接続して電気信号を測定する器具のことを指します。
しかし、他の分野でもプローブという単語は使われているため、情報が混在していることに注意する必要があります。
情報を整理するために、計測器以外のプローブについても紹介していきます。
歯科分野で使用される「プローブ」は、先端がくの字に折れ曲がった形状をしている金属(主にチタン)製の器具のことを指し、歯周組織の状態の検査に使用されます。
先端に目盛りがついているため、歯周ポケットの深さを測定でき、歯周病などの症状の進行状況や、歯周の状態を調べることが可能です。
医療用器具であることから高価であり、一本6,000円前後のものが多いようです。
情報分野では「プローブ情報」という単語が使用されます。
プローブ情報とは、走行中の車の位置情報や速度、ワイパーの稼働状況などの情報のことを指します。
近年の自動車にはこれらの情報を計測するセンサーが付属しており、取得されたプローブ情報はカーナビゲーションシステムなどを通じてデータセンターへ転送され、渋滞の予測などに用いられています。
走行中の自動車を「探針(プローブ)」に見立てることができることから、「プローブ情報」と言うようになったとされています。
最近では、これらのプローブ情報を活用して災害時の交通支援や、事故多発地点の調査などに用いられることもあるようです。
半導体分野でも、テスタなどと接続して電気信号を測定し、半導体の検査に使用するための「プローブ」が使用されていますが、それとは異なる「プローブカード」という半導体検査用部品が存在しています。
プローブカードは、日本語では「探針付き基盤」と訳され、半導体の製造工程でのウエハテストで用いられます。
半導体はウエハ(ウェーハ)と呼ばれるシリコン単結晶でできた板の上に多数のICチップを製作し、この板から半導体一つひとつを切り取って使用されます。
切り取る前にウエハ上にあるICチップに不良品が無いかを検査するのがウエハテストです。
このウエハテストで、プローブカードを通してウエハ上のICチップとテスタが電気信号のやり取りを行い検査が実施されるため、プローブカードは必要不可欠なのです。
プローブはエレクトロニクス関連のさまざまな場面で使用されています。
電子回路の検査や、家電や工業製品などのメンテナンス、半導体の動作確認などで用いられており、学術的な波形観測などでも広く使用されています。
プローブは基台、ケーブル、プローブ・ヘッド、フック・チップ、グラウンド・リードから構成されます。
基台とは、オシロスコープの入力端子に接続するためのコネクタがついた部品であり、ベースとも呼ばれます。
オシロスコープの入力端子にはBNC端子(メス)が一般的に使われているため、プローブ側はBNC端子(オス)となっています。
基台の中には、高域補正回路が入っています。
プローブの核となる部品で、同軸ケーブルが使用されています。基本的に1mの長さのものが多く、インピーダンスは75Ωのものが使用されています。
信号の共振を防ぐために、1mあたりの容量が20p~30pFと小さく、抵抗は200~300Ω/mと大きくなっており、一般のBNCケーブルとは違う特性を持っています。
プローブ・ヘッドは、手でつかむための部分のことであり、人体からのノイズを阻止するため、厳重にシールドされています。
プローブ・ヘッドの内部には、コンタクト部や減衰器が入っており、これらは同軸ケーブルと接続されています。
ターゲット回路上のプローブ・ヘッドと接続する部分を「テスト・ポイント」と言います。
フック・チップとは、鍵型の電極がついたスリーブのことで、端子や電線に引っ掛けて使用します。
グラウンド・リードとは、オシロスコープとターゲット回路のグラウンドを接続する部品のことを指します。
先端には、わに口クリップが装着されていることが多いですが、取り外して使用することもできます。
プローブは一般的に、基台側をオシロスコープの入力端子と接続し、プローブ・ヘッド側をターゲット回路のテスト・ポイントなどに接続して使用します。
しかし、プローブをオシロスコープに接続する前に、補正する必要があります。
プローブの補正がしっかりできていない場合は、振幅変動がみられたり、波形に歪みが出てしまうなど、測定に支障をきたす可能性があります。
プローブの補正の仕方は、オシロスコープのプローブ補正のソースにプローブを接続します。
接続したら、非電導性のドライバなどを用いてキャパシタンスを調整します。この際に、方形波補正信号が整うように調整していきます。
方形波補正信号の上部が水平な直線になれば補正は完了です。
プローブを正しく使えていないときは、測定に誤差が生じてしまいます。このときに、オシロスコープ側が原因であると思い込んで、原因解明に時間がかかってしまうというケースがよくみられます。
実際はプローブが測定の誤差の原因である場合も多いため、そのような事態が起きた際のプローブの確認すべきポイントを紹介します。
先ほど述べた通り、プローブの正しい補正ができていない場合は波形に歪みが出るなどの誤差が生じます。プローブを付け替えるなど際は必ず毎回補正を確認しておきましょう。
測定対象に合っていないプローブを使用している場合は、正しく計測できません。また、プローブの破損にもつながる可能性があるため、必ず適切なプローブか確認してから使いましょう。
プローブと対象の接続を容易にするために、接続アクセサリを使用する場合、それらのアクセサリがノイズを拾ったりして測定誤差の原因になる可能性があります。
適切なアクセサリを選び、長すぎるケーブルは使用しないなど、アクセサリの使用は必要最低限にとどめましょう。
プローブは消耗品であるため、何度も使用していると断線や接触不良などを起こします。
毎回プローブを使用する前に、プローブの検査をするといった確認をしておくと、測定での誤差を防ぐことができるでしょう。
上記の通り、プローブ側にも測定誤差の原因が多く存在しています。測定誤差を避けるためにも、プローブを常日頃から正しく使う必要があります。そのコツを紹介します。
プローブの補正は測定前に毎回行いましょう。同じオシロスコープで使う場合は毎回行う必要はないかもしれませんが、測定環境がよく変わるという場合は常に行うよう心がけると良いでしょう。
プローブを長くするとノイズなどの原因になります。短い接続ですむように、オシロスコープなどの測定器と測定対象は近い場所に設置しましょう。
プローブには電流プローブ、電圧プローブ、特殊プローブの3つの種類があります。
電流プローブとは、対象の電流を電圧信号に変換することによって、オシロスコープなどの測定器でも電流を測定できるようにするプローブのことを指します。
電流プローブは受動型と能動型の2種類から構成されています。
電圧プローブは、電圧を検出し、オシロスコープへ入力するプローブです。受動型(パッシブ)と能動型(アクティブ)の種類から構成されています。
受動プローブとは、オシロスコープの入力部をそのまま対象の測定と直接繋げるような形で拡大したものです。
一方、能動プローブとは、プローブ・ヘッドの近くなどに高入力インピーダンスのアンプを内蔵しており、入力容量が小さくても測定できるプローブのことを指します。
小さい入力容量で計測できるため、高い周波数の波形を測定できます。
特殊プローブは、電圧や電流の測定以外の特殊な用途や形状をしたプローブのことを指します。
特殊プローブのひとつである光プローブは、レーザー信号などの信号を電圧信号に変えて測定できるようにしたプローブのことを指します。
プローブはエレクトロニクス分野において無視できない存在です。
測定器や対象によって適切なプローブは千差万別であり、正確な測定のためには、プローブの正しい知識と適切な選択が必要となります。
プローブを導入する際は、入念に調査したうえで、用途にあったものを選びましょう。