近年、フードテックが注目を集めており、その一種として調理ロボット分野も急速に成長しています。ASD Reportsによれば、世界の調理ロボット市場は2020年の19億USDから、2026年には40億USDに達すると予測されています。
この記事では、調理ロボット市場に焦点を当て、概要や導入メリット、事例紹介について解説します。最新のテクノロジーを駆使したおすすめの調理ロボットも併せてご紹介しますので、ロボットによる効率化を検討中の企業様はぜひ参考にしてみてください。
このような方におすすめです
・調理ロボットの概要や導入メリットについて知りたい方
・国内における調理ロボットの導入事例について知りたい方
・自動化に貢献するおすすめの調理ロボットを探している方
調理ロボットとは、一般的に外食産業で活用される機械です。
例えば、そばロボットは自動的にそばをゆで、ぬめりを取り、最終的に水で締める工程までを自動化します。また、ゆで麺機省エネシステムはお湯の状態を検知し、加熱や待機を調整することで消費電力を最適化します。
これらの調理ロボットは、従来は人間が行っていたタスクを代替するための機械であり、省人化を実現するだけでなく、一貫した品質を提供することから、作業の属人化を防ぐのにも役立ちます。
飲食業界や食品製造業界などで利用される調理ロボットは、以下のような作業を代替することができます。
野菜や肉などの材料を所定の形状やサイズにカットしたり、切ったりする作業を自動的に実行します。
調理法に従って食材を加熱、蒸し、焼きなどの作業を行います。
材料を混ぜ合わせる、またはブレンダーを使用して調理プロセスを補完することができます。
複数の要素を組み合わせて料理を完成させ、それを器に盛り付ける作業を行います。
ソースや調味料などを適切な量で料理に追加する作業を自動的に行います。
外食産業における人手不足の課題に対処する方法として、調理ロボットの活用は注目されています。というのも、厨房内の労力を削減し、特に多店舗展開する事業者にとっては料理の品質や一貫性を確保できる利点があるからです。
市場調査会社Kenneth Researchによれば、2019年における世界の調理ロボット市場規模が8617万ドルで、2028年末までには3億2256万ドルに成長すると予測されています。これは、ホテルなどでの自動化の普及や大手外食チェーンが調理ロボットへの投資を進めていることも要因として考えられます。
調理工程にロボットを導入することで、以下のようなメリット・効果を得ることができます。
近年、少子高齢化により飲食業界での人手不足が深刻な課題となっています。とはいえ、低賃金のアルバイトや外国人労働者に頼ることは、持続可能性の観点からも問題視されてるため、人手不足を克服する解決策の一つとして料理ロボットの導入が注目されているのです。
例えば、長崎県のテーマパーク「ハウステンボス」では、2018年7月から料理ロボットを導入しています。この飲食店では、通常3人が必要なオペレーションを、導入後はスタッフ1人と料理ロボット1台で運営しています。このような導入により、必要な人員を減らし、人件費などの削減に貢献しています。
日本全体で問題となっている飲食店の人手不足に対しても、料理ロボットの導入は有望な解決策の一つと言えるでしょう。
調理ロボットは単純な作業を効率的に継続できるため、人間が行うよりも業務の効率向上が期待できます。人間は集中力が切れると作業スピードが低下し、誤った操作が生じる可能性があるため、長時間の作業には休息が必要です。それに対して、調理ロボットは休むことなく一貫した作業を行うことができます。
そのため、1日の生産性を考慮すると、調理ロボットの導入は業務の効率化に貢献します。加えて、従業員の労働環境を改善し、働きやすい環境を提供できるため、企業が従業員に対するケアを向上させたい場合にも価値を発揮するでしょう。
調理ロボットを導入することで、製品の品質が一貫して保たれ、顧客に対して安定した高品質な料理を提供することが可能です。
たとえプロの料理人であっても、人間が調理を行う限り、料理の品質を一貫して維持することは難しく、味に変動が生じることがあり、顧客に不信感を抱かせる可能性があります。
一方、調理ロボットは内部のデータとアルゴリズムに基づいて、製品を常に一定の品質で提供でき、一貫性のある高品質な料理が実現可能です。この特性は、チェーン店や異なる料理人が交代する飲食店など、様々な場面において非常に有用なソリューションと言えます。
調理ロボットがどのように活用されているかについて、調理内容別による事例をいくつかご紹介します。
安川電機 | 安川電機の「やすかわくん」は、魅力的な外見のソフトクリーム製造ロボットです。左手にコーンを持ち、右手でソフトクリーム機のレバーを引くことができます。 レバーを操作しながら、左手を巧みに動かすことで瞬く間に美しい渦巻き模様のソフトクリームが完成。特に夏季など、ソフトクリームの需要が高まる時期に大いに活躍し、多くの企業が導入を検討している料理ロボットとして注目されています |
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コネクテッドロボティクス | コネクテッドロボティクスのフライドポテトロボットは、自動でポテトを揚げ、その後バギングステーションまで運ぶ工程を自動化し、品質の一貫性と労力の削減をもたらします。 このロボットは、コンパクトな設置が可能で、既存の店舗にも簡単に導入できる特長を備えています。また、人間との安全な共同作業を促進するために、安全性も考慮されています。ポテトだけでなく、唐揚げ、フライドチキン、ナゲットなどにも応用しての活用が可能です。 |
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アールティ | アールティの「Foodly」は、AIを活用して食材を認識し、自動的に選別し、トレイやパッケージに盛り付けるロボットです。人間との協力を前提に開発されており、人との接触でも安全で、双方に損傷を与えません。また、人型のデザインにより、親しみやすさを演出しています。 Foodlyの特徴の1つは、ソフトウェアからハードウェアまで、すべてを自社で設計していることです。そのため、Foodlyは顧客のニーズに合わせてカスタマイズすることができます。 |
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調理現場にロボットの導入を検討されている企業様は、以下の点に考慮してロボットの選定を行うようにしましょう。
調理ロボットの導入は、食品衛生および労働安全に関する規制に準拠していることが不可欠です。健康規制や安全基準に対応しているかを必ず確認するようにしましょう。
調理ロボットを導入しても適切に操作されなければポジティブな費用対効果を受け取ることはできません。スタッフに対して十分な実習期間を提供するだけでなく、適切な保守とメンテナンスを確保するためのサポート体制を確立するようにしましょう。調理ロボットを提供するメーカーによっては、導入時に手厚い支援を行なっていたり、導入後のサポートも充実しているところがあります。まだ日本語対応をしていないメーカーも多いため、機能だけでなくその辺りを考慮した選定が求められます。
調理ロボットの導入には初期投資が必要です。導入に伴うコストを正確に評価し、投資回収期間を考慮してビジネスモデルを検討してください。
調理ロボットを導入すると、従来のキッチンワークフローが変わる可能性があります。効率的でスムーズな運用を確保するために、ワークフローの再設計が必要かどうかを検討するようにしましょう。
調理作業がロボットによって代替されたとしても、味が変わってしまうなどして顧客の反応が変わってしまっては元も子もありません。定期的に顧客のフィードバックを収集し、必要に応じて調整を行うようにしましょう。
調理ロボットは、完全自動で調理を行うことができる魅力的な機械ですが、まだ特定の料理をいつでも提供できる段階には至っていません。
この分野のロボットは内蔵された100個以上のモーションセンサーを使用して、特定のレシピに基づいた料理の手順を学習し、テストする必要があり、このプロセスによって実際に使用できるようになります。
しかし、料理の多様性に対応するためには、高額なコストがかかり、また、需要もまだ追いついていないため、課題が残っています。そのため、同じメニューが頻繁に提供されるような飲食店のコンセプトが明確な場合において、料理ロボットの導入によるメリットが最大限受けられると言えるでしょう。
調理ロボットの導入により、人手不足の克服、業務効率の向上、品質の確保など多くの利点が得られます。適切な調理ロボットを選ぶ際には、導入の目的に合致したモデルを選ぶことが肝要です。導入にはコストがかかる一面もありますが、調理ロボットの採用を検討中の企業は、今回ご紹介した導入事例やおすすめの調理ロボットを参考にし、自社に最適なモデルを選定しましょう。
evortでは、調理ロボットをはじめとした様々なロボット製品を掲載していますので、ロボットによる自動化・効率化を検討中の企業様はぜひご覧になってみてください。