フッ素樹脂コーティング｜PTFE ・PFA ・ETFE

フッ素樹脂コーティングは、金属やその他の素材にフッ素樹脂を薄く塗布し、その表面特性を向上させる技術です。

PTFE、PFA、ETFEといったフッ素樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、非粘着性を持ち、様々な産業で活用されています。これらの特性により、食品加工や製薬、電子部品の製造など、多岐にわたる分野で品質向上とメンテナンスコストの削減に寄与しています。

フッ素樹脂コーティングとは？

フッ素樹脂コーティングとは、金属やその他の素材にフッ素樹脂を薄く塗布することで、その表面特性を向上させる技術です。

一般的なフッ素樹脂には、PTFE（ポリテトラフルオロエチレン）、PFA（パーフルオロアルコキシアルカン）、ETFE（エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー）などがあります。

これらの材料は、優れた耐熱性、耐薬品性、非粘着性を持つため、様々な産業分野で利用されています。

コーティングとライニングの違い

コーティングとライニングは、いずれも素材の表面特性を改善する方法ですが、その適用方法と目的には違いがあります。

コーティングは、素材の表面に薄い膜を形成することで特性を付与する手法です。一方、ライニングは、素材の内側や外側に厚めの層を形成することで、より高い耐久性や保護性能を提供します。

一般的に、フッ素樹脂コーティングは薄く均一な膜を作るのに適しており、ライニングはより過酷な環境での使用に向いています。

▶︎フッ素樹脂ライニングについて

フッ素樹脂コーティングの特性

非粘着性

フッ素樹脂コーティングされた表面は、非常に滑らかで物質が付着しにくい特徴があります。この特性は、食品加工や製薬業界において、製品が表面に付着しないことが重要視される場面で大いに役立ちます。

撥水性・撥油性

フッ素樹脂は、水や油を弾く性質を持っており、防汚効果を発揮します。建物の外壁や自動車部品に利用されることで、雨や油汚れが付着しにくく、長期間にわたって美しい外観を保つことが可能です。

また、撥水性・撥油性は、これらの表面が常に清潔に保たれることを意味し、メンテナンスコストの削減にも寄与します。耐候性の向上により、外装材の耐用年数も延びることが期待されます。

低摩擦性

フッ素樹脂コーティングは、滑りやすい表面を提供するため、機械部品やベアリングなどに使用されます。低摩擦性により、部品間の摩擦が減少し、効率的な動作が実現されます。エネルギーの節約にも貢献し、機器の性能向上や寿命延長が図れます。

また、低摩擦性は、機械の動作音を低減させる効果もあり、静音化が求められる環境でも有効です。

耐熱性

PTFEなどのフッ素樹脂は、約260°Cまでの高温に耐えることができ、耐熱性が求められる環境でも優れた性能を発揮します。高温下でも物性が安定しているため、熱に曝される機器や部品に最適です。

電子部品や半導体製造装置など、温度変化が激しい場所でも信頼性の高い動作が期待できます。さらに、耐熱性の高さから、厨房機器や調理器具においても安全に使用することができます。

耐薬品性

フッ素樹脂は、多くの化学物質に対して強い耐性を持ち、化学プラントや実験設備での使用に適しています。腐食性の高い環境でも劣化しにくく、長期間にわたり安定した性能を維持します。そのため、メンテナンスの頻度が減少し、運用コストの削減にも繋がります。

また、耐薬品性が高いことで、特殊な溶剤や薬品を扱う現場でも安心して使用でき、作業の安全性が向上します。

防汚性

汚れが付きにくいフッ素樹脂コーティングは、電子部品の基板保護や調理器具などでの利用により、製品の寿命を延ばし、メンテナンスの手間を減らします。

防汚性に優れているため、清掃の頻度が減り、労力と時間の節約が可能です。さらに、表面の汚れが原因で発生する故障やトラブルが減少するため、製品の信頼性と耐久性が向上します。

フッ素樹脂ごとの特徴

PTFE （ポリテトラフルオロエチレン）

PTFEは、最も一般的なフッ素樹脂であり、優れた耐熱性と耐薬品性を持っています。この素材は、約260°Cまでの高温に耐えることができ、多くの化学物質に対しても強い耐性を示します。そのため、化学プラントや実験設備など、過酷な条件下で使用されることが多いです。

一方で、PTFEは熱による流動性が低く、成形が難しいという欠点があります。具体的には、加工中に高温が必要となるため、特殊な設備や技術が求められます。

PFA （パーフルオロアルコキシアルカン）

PFAは、PTFEに匹敵する特性を持ちながら、溶接加工や成形が可能であるため、製造工程での柔軟性が高い素材です。耐熱性や耐薬品性に優れているため、様々な化学薬品や高温環境での使用に適しています。

さらに、成形加工がしやすく、複雑な形状の部品にも対応できるため、多くの産業分野で利用されています。電子部品や半導体製造装置など、精密さが求められる分野でも高い評価を得ています。

FEP （パーフルオロエチレンプロペンコポリマー）

FEPは、PTFEに比べて耐熱性は劣るものの、溶接成形が可能であり、その他の特性も優れています。加工のしやすさが魅力であり、特に複雑な形状や細部の加工が求められる場合に適しています。

低摩擦性や非粘着性も備えているため、機械部品や電子機器の保護コーティングとして利用されることが多いです。また、透明性が高いことから、視認性が求められる用途にも適しています。

ETFE （エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー）

ETFEは、機械的特性に優れ、電気絶縁性、耐放射線性、耐薬品性、低温特性も良好です。特に厳しい環境での使用に適しており、耐久性の高さから、宇宙産業や軍事用途などでも活用されています。

また、ETFEは高い機械強度を持つため、建築材料としても利用されます。フレキシブルな素材であるため、様々な形状に対応可能で、設計の自由度が高い点も特徴です。

フッ素樹脂コーティングの用途例

半導体・電子部品	フッ素樹脂コーティングは、半導体および電子部品製造において、耐薬品性と防汚性が重要な役割を果たします。これらの特性により、化学薬品による腐食を防ぎ、高純度の製造環境を維持することができます。また、非粘着性により、微細な部品への汚れの付着を防ぎ、製品の品質を向上させます。
合成ゴム・タイヤ	合成ゴムおよびタイヤの製造において、フッ素樹脂コーティングは、型離れ性や搬送性を向上させる役割を果たします。非粘着性により、ゴムやタイヤが型からスムーズに離れ、生産効率を向上させます。
化学	化学工業では、フッ素樹脂コーティングの耐薬品性が特に重要です。腐食性の高い化学薬品を扱う環境において、装置や配管の保護に使用され、長期間の耐久性を保証します。また、非粘着性により、汚れの付着を防ぎ、清掃やメンテナンスが容易になります。
インキ・塗料	インキや塗料の製造プロセスでは、フッ素樹脂コーティングの防汚性と非粘着性が役立ちます。製造装置の表面にインキや塗料が付着しにくくなり、製品の品質を保ちながら生産効率を向上させます。また、清掃の手間を減らし、稼働率を高める効果もあります。
粘着剤製造	粘着剤の製造において、フッ素樹脂コーティングは、非粘着性が重要な役割を果たします。製造装置や容器の表面に粘着剤が付着しにくくなり、材料の無駄を減少させます。これにより、製品の品質と製造効率が向上します。さらに、清掃作業を簡易化します。粘着剤の残留が少ないため、製造工程間の切り替えや定期メンテナンス時の清掃が容易になり、作業時間の短縮とコスト削減にもつながります。
医薬	医薬品製造では、フッ素樹脂コーティングの耐薬品性と防汚性が特に重要です。製薬設備や容器の表面にコーティングを施すことで、設備の腐食を防ぎ、高純度の製品を製造することが可能になります。また、清掃が容易になり、バリデーション管理が徹底されます。
フィルム製造	フィルム製造およびコンバーティングでは、フッ素樹脂コーティングの非粘着性と耐熱性が重要です。フィルムが製造装置に付着することを防ぎ、高速かつ効率的な生産を可能にします。また、耐熱性により、加工工程での高温にも耐えられ、安定した品質を維持します。

日本フッソ工業のフッ素樹脂コーティング

日本フッソ工業株式会社は、フッ素樹脂焼付コーティング加工のリーディングカンパニーとして、フッ素樹脂を始めとする表面処理技術を提供しています。

医薬品製造、食品加工、化学プラントなど、幅広い産業用途で活用されており、用途に応じて、帯電防止、高硬度、セラミックコーティングなど、様々な特性を持つコーティングの提案が可能です。

製品ラインナップ

帯電防止フッ素樹脂コーティング ECシリーズ

「ECシリーズ」は日本フッソ工業が開発した帯電防止フッ素樹脂コーティングです。フッ素樹脂の非粘着性や耐食性を維持しつつ、静電気帯電を防止できる点に特長があります。

静電気災害を防ぐために設計されており、漏洩抵抗値は社内基準の10⁷Ω未満、実測値で10⁴～10⁶Ωを実現可能です。安全かつ高性能な帯電防止効果が得られます。