フッ素樹脂ライニングは、化学プラントや半導体製造、医薬品製造、食品加工、環境関連設備など、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。この技術は、基材の表面を化学的に安定したフッ素樹脂で覆うことで、耐薬品性や耐摩耗性を飛躍的に向上することが可能です。
PTFE、PFA、ETFEなどのフッ素樹脂は、それぞれの特性を活かし、過酷な環境下でも高い信頼性を発揮します。
ライニングとは、基材の表面を別の素材で覆い、保護や機能向上を図る技術のことです。金属やプラスチックの表面に耐薬品性や耐摩耗性を付与するために用いられます。
フッ素樹脂ライニングは、化学的に非常に安定しており、ほとんどの化学薬品に対して優れた耐性を持っています。
そのため、酸やアルカリ、溶剤に対しても長期間の使用が可能です。また、高温環境下でも物性がほとんど変わらないため、厳しい条件下での信頼性が求められる設備に最適です。
コーティングとライニングは似た技術に見えますが、その目的と方法には違いがあります。コーティングは、基材の表面に薄い膜を形成することで、非粘着性や洗浄性を向上します。一方、ライニングは厚い層を形成し、長期間にわたる耐薬品性や耐摩耗性の向上を目指します。
そのため、ライニングの方が過酷な条件下での使用に適しています。
▶︎フッ素樹脂コーティングについて
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、非常に優れた耐薬品性と耐熱性を持ち、多くの過酷な環境下で使用されます。広範な温度範囲に対応できるため、極端な温度変動にも耐えられます。摩擦係数が非常に低く、滑りやすい表面が求められる用途にも適しています。
例えば、非粘着性が必要な製造ラインや化学プラントの配管システムで活用されます。
PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)は、PTFEに似た耐薬品性を持ちつつ、さらに優れた加工性を特徴としています。複雑な形状の部品にも均一なライニングを施すことができるため、多様な用途に対応可能です。
ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)は、フッ素樹脂の中でも特に高い機械的強度を誇ります。耐薬品性は他のフッ素樹脂に若干劣るものの、耐摩耗性と耐衝撃性に優れているため、物理的なストレスがかかる環境において非常に適しています。
高い機械的強度により、重工業や建設業における過酷な使用条件でも信頼性の高いパフォーマンスを発揮します。
フッ素樹脂ライニングには主に以下の3つの工法があります。
フッ素樹脂シート(PTFEやPFAなど)を接着剤で金属基材に接着する方法です。シートの厚みがそのままライニング厚みになるため、厚膜加工が可能です。
比較的複雑な形状にも対応できますが、接着強度は接着剤に依存するため負圧環境での使用には向いていません。
フッ素樹脂パウダーを静電気の力で金属基材に付着させ、高温の焼成炉内で焼き付けを繰り返して厚い皮膜を形成します。複雑な形状にも対応可能ですが、一度に塗れる厚みに限界があります。
缶体や配管の内部にフッ素樹脂パウダーを封入し、焼成炉内で回転させながら加熱・溶融させて皮膜を形成します。均一な厚みの皮膜を得ることが可能です。
化学プラントの設備 | 薬品タンク:強酸や強アルカリなどの腐食性の高い化学薬品を貯蔵するタンクの内面保護に使用されます。 配管システム:腐食性の液体を輸送する配管の内面保護に適用されます。直管、エルボ、バルブなどの配管部品にPFAライニングが施されます。 |
---|---|
半導体製造装置 | 高純度薬液用タンクや配管:半導体製造プロセスで使用される超高純度の薬液を扱う設備に使用されます。 |
医薬品製造設備 | 医薬品製造用のリアクターや貯蔵タンク:製薬プロセスにおいて、高純度を維持し、薬品との反応を防ぐために使用されます。 |
食品加工設備 | 食品製造ラインの配管やタンク:食品の品質を保持し、洗浄性向上により異物混入を防ぐために使用されます。PFAの非粘着性が活かされます。 |
環境関連設備 | 排水処理設備:腐食性の高い排水を扱う設備の保護に使用されます。 |
分析機器 | 高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)などの分析機器の部品:高純度の分析を可能にするために使用されます。 |
日本フッソ工業株式会社は、フッ素樹脂コーティング・ライニングの専門企業として、付着・腐食・溶出を防ぐ表面処理技術を開発・提供しています。
リチルライニングは、日本フッソ工業が開発した画期的な厚膜焼付けフッ素樹脂ライニング技術です。
リチルライニングは1〜3mmの標準膜厚を実現し、従来の静電粉体塗装よりも大幅に厚い皮膜を形成できます。
被塗物を3次元回転させながら焼成することで、熱履歴を重ねることなく厚膜ライニングを実現します。
焼付ライニングのため、母材金属との密着性が高く、負圧条件下でも使用可能です。
フッ素樹脂を完全溶融させて皮膜を形成するため、継目がなく、残液の溜まりを防止できます。
グラスライニングや静電粉体塗装では困難な複雑な形状にも対応可能です。
必要に応じて皮膜を多層構造にすることで、収縮による剥離問題を緩和します。
PFA樹脂を使用した「リチルピュア」は、メタル溶出防止性能に優れています。
社名 | 日本フッソ工業株式会社 |
---|---|
所在地 | 〒587-0042 大阪府堺市美原区木材通2-4-6 |
設立年月 | 1966年11月 |