超音波金属接合とは?
超音波金属接合とは、重ねた金属を超音波振動によって接合する技術です。
半田などを使わず、直接接合することが可能。また、母材の融点以下の温度で行う接合なので、母材の金属特性を保ったまま接合することが可能です。
同じ種類の金属同士の接合はもちろん、銅とアルミなど異種金属も接合できます。
溶接などに比べ、接合周囲への熱影響範囲が狭く、接合部の電気抵抗値が低い高品質な接合を実現します。
超音波金属接合のプロセス
超音波振動によって、金属同士が摩擦を起こします。
金属表面の酸化皮膜が破壊され、金属同士の原子間の結合が起こることで接合されます。
超音波接合が可能な金属
材料の接合適合性を評価する際には材料硬度、融点や再結晶温度が目安となります。
一般的には亜鉛、鉛、錫をのぞく非鉄金属が適しているとされています。具体的には、銅、アルミニウム、ニッケル、貴金属(金、銀、プラチナ、パラジウム)などの金属に、超音波接合を適用可能です。
加工の特長
超音波金属接合は、接合面が原子レベルで結合する点、融点以下の接合であるため熱影響および物性への影響が少ない点から、以下のような優れた特長を持ちます。
丈夫な接合が可能(引っ張り強度が高い)
異種金属同士、異素材同士の接合が可能
母材の強度を保てる(母材本来の金属特性を保持できる)
電気抵抗値が小さく、電流のロスが少ない
超音波金属接合は配線の接合に最適
抵抗溶接では難しいこのような接合も、超音波金属接合なら実現できます。超音波金属接合は、接合部の電気抵抗値が小さく、電流のロスが少ないため、配線の接合に最適です。
接合事例
スイッチ配線の接合 | 撚線の接合において、銅材接合が容易です。かまぼこ型など、接合部の仕上がり形状もある程度要件に合わせた設計が可能です。 |
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ワイヤー接合 | 電気自動車(EV)向けの太いハーネスの接合にも適用可能です。 |
ニオブチタンの超伝導線接合 | 材料が溶融し混ざり合ってしまうと性能を損なうワークに対しても、超音波接合は有効です。例えば、銅に覆われたニオブチタン線の銅表面だけを接合して導通させたいケースにも適用できます。 |
ワイヤハーネス | |
リチウムイオン電池 | 負極タブ:銅箔積層 |
42アロイ(FeNi)+φ0.08 |
作業性・コスト面におけるメリット
繊細なワーク / 薄いワーク の接合が可能
配線や金属箔など、繊細なワークや薄い形状のワークの接合が可能です。
短時間で加工可能
超音波金属接合は、他の接合法と比較しても短時間で接合できます。また、ワークを送り出しながら連続で接合することもできます。
安全で導入後すぐに生産できる
超音波金属接合機は作業者の熟練度を必要とせず、導入後すぐに生産を開始できます。また加工時には両手押しのスタートボタンを押すだけなので、作業者にとって安全な運用が可能です。さらに、リチウムイオン電池やワイヤハーネスの量産ラインへの組み込みが容易です。
超音波金属接合を適切に行うためのポイント
超音波接合を適切に行うには、様々な注意点があります。ここでは、周波数の選択 / 発振出力の選択 / 工具ホーンの形状 について紹介します。
周波数の選択
接合範囲などによって、適切な周波数を選択することが重要です。周波数は振動の伝達距離に関わり、共振するホーンのサイズ(接合可能なサイズ)が変わります。
発振出力の選択
金属の接合には瞬間的なパワーを要します。また、基本的に必要なパワーは接合する面積や体積に比例して増加する傾向にあります。
工具ホーンの形状
超音波金属接合において、この工具ホーンの形状の設計も、各メーカーの実力が試される重要な部分となります。詳しくはこの後ご紹介します。
工具ホーンの形状の重要性
工具ホーンとは |
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工具ホーンは超音波金属接合機の部品のひとつで、ワークに直接触れる部品です。工具ホーンの役割は、機械で発生させた振動に共振し、振動を増幅させてワークに伝達させることです。 |
製品形状や接合形状、金属の材質や求められる接合強度に合ったオーダーメイドの工具ホーンを用いることで、接合品質・生産性の向上が可能です。
不適切な工具ホーンを使用する場合のリスク
工具ホーンは、使用するうちに摩耗してしまう消耗品のため軽視されがちです。超音波接合機を提供するメーカーによっては、特定の形状の工具ホーンしか提供しておらず、十分なカスタマイズができない場合もあります。
しかし、目的に合っていない形状、または摩耗により形状が変化した工具ホーンを使用し続けると、下記のような問題が起きることがあります。
工具ホーンの寿命が短くなる
エネルギーの伝達が不均一になり接合強度にばらつきが生じる
特定の部位に過剰なストレスが集中してクラックや破壊の原因になる
超音波金属接合のことなら精電舎電子工業
精電舎電子工業では、超音波金属接合に関するソリューションを提供。超音波金属接合機の開発・設計・製造・販売や、工具ホーン・受治具の製作を行っています。
専門技術員による接合のご相談やテストも随時承っております。製品の開発段階から承りますので、お気軽にご相談ください。
精電舎電子工業の工具ホーン設計技術
精電舎電子工業では、全ての工具ホーンをオーダーメイドで製作いたします。
工具ホーンに「標準的な形状」は存在しません。お客様の製品形状や接合形状、金属の材質、そして求められる接合強度など、さまざまな条件を考慮した上で、一つ一つを専用設計します。
当社は、少しでも品質やコスト面でお役に立てるよう、材質の変更や摩耗しにくい形状について、お客様と一緒に解決していきます。
これまでに蓄積した振動解析データを用いたノウハウも活かしながら、お客様に最適な形状をご提案いたします。
ナール(目立て)形状の設計
ナールとは工具ホーンの先端の凹凸のことです。工具ホーンの部位の中でも、ナール形状の設計は接合品質および工具ホーンの寿命を左右する非常に重要な要素であり、当社の得意とする分野です。
他社ではナールの形状までの提案がない場合もありますが、適切なナール設計がされていない場合、接合品質が低下したり、ホーンの寿命を短くする可能性があります。
精電舎電子工業について
「溶着溶断装置と応用加工技術」を総合的に提供
「溶着溶断装置と応用加工技術」を総合的に提供できるユニークなメーカーとして、また良きコンサルタントとして、今日に至っております。
装置に用いる技術として超音波の「音波」、高周波の「電波」、レーザの「光波」、この3つの波動エネルギーをコアテクノロジーとしており、それらの応用技術を駆使した装置を提供しております。
その基本は、精電舎電子工業独自の研究開発システムと、創業当初から継続している全国の国公私立大学との緊密な産学協同開発体制から生まれた多くの特許や蓄積されたノウハウにあります。
この長年培った膨大なノウハウをもとに、当社が保有する様々な工法の中からお客様に最適な工法をご提案いたします。工法提案の他にも溶着形状の提案や作業効率の改善、品質の向上、生産ラインの自動化などにつきましても是非お気軽にご相談くださいます様お願いいたします。